yeye’s diary

私の芝は青い

「ベッキョン」という人の声についての想像

 

 ベッキョンという人の歌声について、ベッキョンの声と私の個人的な人生の関わりについて書きたかった。

 

1.日記から、ベッキョンについて、ベッキョンの声について書いている部分。

(ただ考えや、ものごとから受けた印象を書き殴っているから文章は支離滅裂、あとから読むと何の話かよくわからないということも多発する日記)

 

ベッキョンの声は楽器……ベッキョンの声を聴くたびに、世の中にはこんな音があったのかと驚かされる。聴いたことのなかった楽器の音みたいに、空から降ってきたみたいに心を震わせる。(2021/9/21)

 

ベッキョンという美しい楽器が、より音を出そうと、ベッキョンの身体を酷使しているような……白く笑う人だし(※)、Lifesavior、救世主、音を奏でる忠実な「楽器」でもある。

天上の楽器。天が裂けるときの音。(2021/10/2)

 

神さま、私の救世主を守ってよ。彼の背負うものは一人の人間が背負えるものなのかな。ベッキョン先生自身ですら今まで言葉にせずにきたような思考の小さなくせや、考えの流れや、感情の動きのすべてが守られ、彼の味方になって彼を守りますように。(2021/10/12)

 

(150531のEL DORADO (https://youtu.be/kNcMAQ7K6CE)を見た日)

天使の姿を見てしまった。天の装置としての天使。壊れることを恐れない、光を恐れない、崩壊の日にきっと聞こえる歌声。(2021/11/6)

 

その喉がこの世に、この地上にあることが嬉しい。私ははやくベッキョン先生という存在を乗り越えたい。その存在に絶え間なくダメージを受けている。絶え間なく降り注ぐ慈悲に、心臓が痛んで仕方がない。

 

天才であり続けようとしてくれること。はやく乗り越えてしまいたいと思ってしまうほどの重み。(2021/11/11)

 

彼が人間でいてくれてよかった。概念や観念や理想や祈祷の中に生きる存在じゃなくてよかった。(2021/11/14)

 

ベッキョン先生の声、泣いているみたいって思ったけど、少し違って、泣いて泣いてあんまりに泣いて、喉が開いて息が深くなり、自己憐憫の心地良い痛みのあるときのあの感覚、あれを呼び起こす声。(2021/12/7)

 

ベッキョンのそばでベッキョン愛する人たちが、より深く彼を愛し、守り、深く寄り添えるように祈ります。その人たちのことを祈ります。(2021/12/12)

 

光の人なのに、夜を歌う人。(2022/1/16)

 

どうしてそんなに優しい声で歌うの。甘やかす。心を麻痺させる。

歯をくいしばってベッキョンの声に耐えている。Sing for youを聴きながら歯をくいしばっている。(2022/3/10)

 

天使が声を奪われる直前の、最後に絞り出す声のように歌う。私は奥歯を噛み締めて、血の味を感じるみたいに聴いている。(2022/3/20)

 

私の心の支え、強固な砦、煉瓦、私のマイセン焼の壁。天の火にも焼け落ちない砦。(2022/3/21)

 

欲望の対象、天使、天才、偶像、キャンディみたいに甘い夢、泣いているみたいな震え。私たちと彼が作り上げた幻想。秘密、合言葉、呪文。救いを求めるときに口にする音、ベッキョン。(2022/4/24)

 

 

2.連想するもの、連想させるもの。

・ギュスターヴ・ドレの「神曲」天国篇のこの絵

f:id:qron0605:20230204020449j:image

 

・ディキンソンの詩、「I felt a Funerral, in my Brain,(私は葬式を感じた、頭の中に)」の一節

As all the Heavens were a Bell,

And Being, but an Ear,

まるで空全体が一つの鐘になり、

この世の存在が、一つの耳になったように、

(対訳ディキンソン詩集 亀井俊介編)

 

・映画、オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴの台詞

「空には惑星と同じサイズのダイヤがある 圧縮された星の中心核 白色矮星よ まばゆい光を放ち──巨大な銅鑼のように音楽を奏でてる」

「ほんの50光年先よ ケンタウルス座の方向に」

「空で音楽を奏でてるダイヤのことだけ考えて」

 

・ロックバンド、Holeの「Awful」の歌詞

Swing low, cherry, cherry

Yeah, it's awful

He's drunk, he tastes

Like candy, he's so beautiful

Candyという単語が入っているせいかもしれないけど、この歌詞を聴くといつも彼のことを思う。

ライブ映像でコートニーがこの部分を歌うとき、驚くほど優しい顔をして天を仰ぐのが大好きで、それが彼を思うときの気持ちに似ている気がする。

 

マイセン焼の壁

ドイツのドレスデンドレスデン城にあるマイセン磁器のタイルの壁。

高温で焼かれたタイルは空爆でも焼けなかったそうで、その話を読んでから私の中の屈強さの象徴。

 

・朝

それも、まだ薄暗い早朝。

毎朝、「U」をアラームにして起きている。それ以外のどんな曲も朝には苦しく思えてしまうのに、どんなに重くのしかかる朝でも、Uだけが眠りをすくい上げて、そっと肩を揺さぶってくれる。

 

 

3.個人的な決心について

 一昨年のある通夜。畳に並べて敷かれた布団の中にいた。すぐ傍に母や妹、叔母が眠っていた。隣の部屋ではまだ酒を飲むグラスの音、喋り声が響いていて、それを遠くに押しやりたくて、彼の歌を聴いていた。

 隣の部屋の彼らは、所謂年配の男性たちは、かつて暴力で家庭内の女性の言葉を押しつぶした男性について「でも、いい人だった」と言った。暴力を家庭で耐え忍んだ女性を褒めた。それこそが取るべき態度だったと言うように。

 婚姻の強要、学びたいという意思の否定。大学に行くことを許されなかった女性の話。(聞く度に胸が詰まる話)

 また、彼らの抱く母親への幻想。彼女たちが家庭に費やさざるを得なかったそのすべての労力に対する、無関心さ。

 古い田舎町で生きた人たちの喋り声は、暴力、怒声、婚姻、酒、暴力、暴力。それらの記憶に満ちている。

 

 私はここを離れて、戻らないと決めるべきだ。死なないために。

 勉強しよう。行きたいところに行こう。働こう。もしそのために一人ぼっちで死ぬことになっても。

 そう自覚したとき、初めて決意という形でこの意思を認識したとき、Every secondの優しい声が波のように打ち寄せていた。

 

 これはベッキョンという歌手、一人のアイドル、そして彼自身には何も関係のない私個人に起こったことだけど、そこに彼の歌があったことは私の人生にとって大きな事実だ。

 彼の声は勇気の象徴。こうやって彼は彼の歌を聞く人間一人一人の中で偶像になっていく。

 

 변백현という人の喉が持つ声。 

 震える心をなだめて、感情を砂糖漬けにして麻痺させるような、でもそのくせ人生への切実さに満ちた声。

 彼があの明るい笑顔で笑い飛ばしてくれたらなんだってどうでも良くなるような気がするのに、決して笑い飛ばしてはくれない人。笑い飛ばすことを許さない人。ぞっとするほど容赦のない現実を生きている人。自分の人生が喜劇だったらいいと言った人。それは、人生に対して一瞬の隙もなく張り詰めた真剣さなんだろう。という幻想。

 

 彼の声に甘やかされて、でも優しく突き放されながら生きている。あたたかく包み込まれながら冷たい雨の夜に放り出されている。

 これはおまえの人生だって突きつけられている。

 

 私は彼の声の切実さが好きなんだと思う。 

 そして、そう感じさせる、彼という偶像が好きなんだろう。

 ベッキョンという一つの偶像を愛している。彼が作り上げたものを愛している。そして同時に彼の声が突きつけてくる、私、自分自身の人生も愛している。

 

※ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」で韓国語の白く笑う、という表現について言及されていて(これを読んで日記に書いたんだと思う)、寂しげに、堪えるように笑う、というような意味だったような気がするけど、今手元に本がないのでわからない。わかり次第ちゃんと追記します…すみません…